レポート
2026.11.04
国際色豊かにパワーアップした、“若き音楽家たちの祭典”

みずみずしい才能が魅せた「YAMAHA GALA CONCERT 2026」

ヤマハの教育活動・音楽普及から生まれ育つ子どもたちの“若き音楽家たちの祭典”として2004年にスタートした「ヤマハ・ガラ・コンサート」。今年は装いも新たに「YAMAHA GALA CONCERT 2026」として、10月4日(日)にBunkamura オーチャードホールで開催されました。ヤマハミュージックスクール在籍生と国内外で活躍するスクール出身アーティストによる、国際色豊かなコンサートの模様をレポートします。

小倉多美子
小倉多美子 音楽学/編集・評論

武蔵野音楽大学音楽学学科卒業、同大大学院修了。現在、武蔵野音楽大学非常勤講師。『音楽芸術』、『ムジカノーヴァ』、NHK交響楽団『フィルハーモニー』の編集に携わる。『最...

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クラシック、ジャズ、ポップスなど、多彩な音楽と若き音楽家たちが集結

オープニングは、井上暖之(エレクトーン)が、このガラ・コンサートのために書き下ろした新作《Epiphany》。作曲家の嬉々とした躍動感がそのままホールに響き伝わってくるサウンドで、一気に華やかなライヴ・ステージの世界が幕を開けた。

続いて、ヤマハミュージックスクールから飯田みのり(小4・ピアノ)と、松井萌歌(小5・エレクトーン)が登場し、2025年度ジュニアオリジナルコンサート参加作品を演奏。

飯田みのり《組曲「海と空と」》は、沖縄・宮古島へ行った家族旅行の楽しさを表現。ラグタイム風のリズムに乗り、うきうきした気分に満ちた2曲目は、美ら海や満天の星空を彷彿とさせる美しさだ。心にあふれた感動を純粋に音に託す創作が展開されているのであろう。創作世界から現れたプリンセス2人のような、きらきらしいピアノ連弾だった。

松井萌歌《夢と幻想の踊り》は、不思議な世界の旅の情景をエレクトーンで描いた作品。上段の鍵盤からヴァイオリンや木管の音色、下段からは金管、足鍵盤ではコントラバス、とスタンダードな音域配分で始まったが、トランペットとフルートが1小節ずつ交互に展開したり、緊張の後に弦楽器の柔らかな音が響き渡るなど、細密に設計されたオーケストレーションでめくるめく世界が広がる。想いのなかで明滅する響きを鮮やかに現実の響きへと換える10歳に、驚嘆を禁じえなかった。

武本和大(ピアノ)は《Moon Sorcerer》を披露。国立音楽大学ジャズ専修で塩谷哲、小曽根真、宮本貴奈ら第一線のジャズピアニストに学び、唯一無二の音を獲得。客席奥にまで届きながら、割れるような甲高さはなく、むしろ柔らか。ニューヨークを拠点に活躍するテナー・サクソフォン 馬場智章のテクニック抜群のアドリブと呼応する音色には、自身の発露といつわりなく対峙してきたアーティストの深みが聴こえてくる。

村松海渡(ピアノ)は、力強さの中にもあたたかな歌心を感じさせ、丁寧な演奏だったリスト《超絶技巧練習曲第10番》に続いて、音名が書かれた12枚のカードから3枚を引き、その音で即興演奏を行った。引いたカードは、シ、♯ド、ド。かなり狭い音程関係の3音は、美しいコラールのような響きや、微妙な響きの違いを聴かせた。東京大学大学院でピアノ演奏と科学技術を融合する研究に取り組んでおり、孤高のピアニストの高度な技術を誰もが共有できる未来も遠くない。

SNSフォロワー1,000万人超のインドネシアが誇る歌姫 イシヤナ・サラスファティと、音楽プロデューサーでエレクトーン奏者のケナン・ルイ・ウィジャヤも登場した。エレキギターやドラムを加えたイシヤナ《UNLOCK THE KEY》は、本格的なクラシックの歌声に支えられながら、エキゾチックでポップな魅力も放ち、駆け付けたインドネシアのファンからも熱烈な声援が送られていた。

後半は、大井駿指揮・東京交響楽団とピアノの共演である。

島多璃音(ピアノ)のサン=サーンス《ピアノ協奏曲第5番「エジプト風」》は、その譜読みの細かさ、イメージの豊かさ、それを実現する技術の高さを示してあまりある快演で、すべてクリアに弾き分けられたパッセージが次々と繰り出されてくる。その音色やイメージの多彩さ、スピード感、鮮やかな技巧は、オーケストラから熱演を引き出し、最終楽章終盤の迫力や華やかさは、この新鋭の名を聴衆に深く刻んだことであろう。

コンサート最後は、国際舞台で活躍する大林武司(ピアノ)が、自身のアレンジによるガーシュウィン《ラプソディー・イン・ブルー》で飾った。冒頭、駆け上がるクラリネットのドライヴ感に始まり、管の奏者たちが個人技を輝かせ、ノリに乗っての熱演。大林ならではのジャジーな香りに満ちたカデンツァも相まって、即興的な対話を十二分に堪能した。

クラシック、ジャズ、ポップスなど、多彩な音楽と演奏者が集結したガラコンサート。みずみずしい才能に出会う、豊かな時間だった。          

公演データ
YAMAHA GALA CONCERT 2026

日時:2026年10月4日(日) 15:30開演

会場:Bunkamura オーチャードホール

曲目:

第1部

井上 暖之:Epiphany

飯田 みのり:組曲「海と空と」

松井 萌歌:夢と幻想の踊り

武本 和大:Moon Sorcerer

フランツ・リスト:超絶技巧練習曲 第10番 ヘ短調 S.139-10

即興演奏

イシヤナ・サラスファティ:UNLOCK THE KEY

第2部 東京交響楽団との共演

カミーユ・サン=サーンス:ピアノ協奏曲第5番 ヘ長調 Op.103「エジプト風」

ジョージ・ガーシュウィン:ラプソディー・イン・ブルー

出演:

井上 暖之(エレクトーン)、飯田 みのり(ピアノ)、松井 萌歌(エレクトーン)、武本 和大(ピアノ)、村松 海渡(ピアノ)、イシヤナ・サラスファティ(ヴォーカル/ステージピアノ)、ケナン・ルイ・ウィジャヤ(エレクトーン)、島多 璃音(ピアノ)、大林 武司(ピアノ)、大井 駿(指揮)、東京交響楽団、ほか

小倉多美子
小倉多美子 音楽学/編集・評論

武蔵野音楽大学音楽学学科卒業、同大大学院修了。現在、武蔵野音楽大学非常勤講師。『音楽芸術』、『ムジカノーヴァ』、NHK交響楽団『フィルハーモニー』の編集に携わる。『最...

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