今井美樹さんの声が特別な理由~「声という楽器の担当の一人として舞台に立っている」
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
室内楽アンサンブルの一奏者のように
去る6月、今井美樹さんにリモートでインタビューさせていただく機会がありました。内容は、この秋のBillboard Liveでのライブについて。「家庭画報」の音楽コーナーで紹介するためのものでした。その中で印象的だったことがあります。
今井美樹さんといえばやはり、あの透き通った歌声。音源で聴いてもわかるクリアな声の粒がおそらくライブでは空間中に満ちるのだろうと思い、「声は空気を震わせて伝わっていくものですけれど、あの特別な歌声で会場の空気をコントロールするために心がけていらっしゃることは……?」と、問いかけてみました。
すると今井さんはこうお答えになったのです。
「いえいえ、私がコントロールしているわけじゃないんです。アンサンブルの中で、声という楽器の担当の一人として舞台に立っている感覚ですから。自分の楽器を気持ちよく鳴らすために、心地よい音楽の中にいたいというところはありますけれどね。
その意味では、私の歌声によって、アンサンブルで伝えられるものがより良くなったりそうでなくなったるするのですから、プレッシャーです。
そもそも、自分の声が何を持っているのかも、いまだによくわからない。ただそれに呼応して、共演者のみんなが一緒に奏でてくれることで、おもしろく伝わるのかもしれないとは思いますけれど」
ポップスの歌い手は、一人スポットライトを浴びて歌うイメージだし、特に今井さんのような特別なお声は、それありきでステージが成り立つと認識していた自分にとって、今井さんがいわば室内楽アンサンブルの一奏者のようなスタンスでステージに立っていることは、どこか意外だったのでした。
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