読みもの
2026.08.26
プロの合唱団のお仕事拝見!【前編】

東京混声合唱団パートマスターが語る~「体が楽器、体が資本」歌声を支えるプロの仕事術

日本を代表する常設のプロフェッショナル合唱団、東京混声合唱団。1956年の創設以来、日本の合唱作品の委嘱・初演をはじめ、オーケストラとの共演やオペラ、学校公演、レコーディングまで、幅広い活動を続けています。
今回は「プロの合唱団のお仕事拝見!」をテーマに、東京混声合唱団(東混)のソプラノ・パートマスター、大沢結衣さんと、アルト・パートマスター、小林音葉さんにお話を伺いました。
年間150を超える公演を行なうという東混。日々どのような仕事をし、何を意識しているのでしょうか。

ONTOMO編集部
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

ゲスト:大沢結衣さん、小林音葉さん(東京混声合唱団)
MC:ONTOMO編集部

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※本記事はポッドキャスト番組『ONTOMO Radio』で語られた内容を再構成しています。

大沢結衣(おおさわ・ゆい)
国立音楽大学声楽専修卒業。
2018年に東京混声合唱団入団。現在ソプラノパートマスター。
2024年の欧州ツアーでは、サン=サーンス:歌劇《祖先》(山田和樹指揮、モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団)で合唱ソリスト"乙女"役をつとめ、収録CDにクレジットされた。
小林音葉(こばやし・おとは)
福島県郡山市出身。山形大学地域教育文化学部音楽芸術コース声楽専攻卒業。
現在、東京混声合唱団アルトパートマスター。
早稲田大学女声合唱団、JR東日本コンサルタンツ(株)JRC Chorus、Chor Ampersandボイストレーナー。
東京混声合唱団
1956年創設、山田和樹が音楽監督を務める日本を代表するプロ合唱団。年間150回に及ぶ公演やメディア出演のほか、オーケストラ共演、オペラ出演など多方面で活躍。250曲を超える委嘱作品をはじめ、古典から現代曲まで歌いこなす幅広いレパートリーを持つ。文化庁芸術祭大賞やサントリー音楽賞などを数々の賞を受賞し、合唱界の発展にも尽力。

パートマスターってどんな仕事? 個性豊かな東混の舞台裏

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——まず、お二人ともパートマスターを務めていらっしゃいますが、どんな役割なのでしょうか?

大沢 いろいろありますが、主にはパート内の人事ですね。例えば、その曲のソリストをどなたにお願いするかを決めたり、ソプラノ内でさらに声部が分かれている曲では、「この人はソプラノ1、この人はソプラノ2」というように割り振りを決めたりしています。

小林 あとは、団員のことを見守る役目もありますね。「ちょっと困っていることはないかな」とか、「大丈夫かな」とか。

——ほかに団内にはどのような役職がありますか?

大沢 練習時間の管理をするインスペクターという役職もあります。指揮者と団員の間に立って、練習時間の配分などを調整してくれます。衣装を担当する人もいますね。

小林 上着にも何種類かあって、曲のイメージによって「今回はどれにしますか?」と指揮者に聞くこともあります。

——年間150を超える公演を行なっているとのことですが、定期演奏会以外にはどのようなお仕事がありますか?

大沢 オーケストラとの共演やオペラ、学校公演、ワークショップのほか、CDやテレビ、CM、ゲーム音楽のレコーディングなどもあります。最近では、合唱編曲された歌謡曲や昭和の懐かしい曲を歌う機会も増えていますね。

小林 本当にいろんなジャンルの曲を歌います。

——東混は、普段どんな雰囲気なんですか?

大沢 面白い人ばかりですね(笑)。個性的と言ったらいいのか、変な人と言ったらいいのか。

小林 基本的ににぎやかで、仲がいいと思います。みんな旅行や食べ物が大好きで、公演先に行くと「ここのこれはおいしいよ」と情報交換したり。

大沢 声楽関係の人は食べることが好きな人が多いですよね(笑)。

いろいろな歌い方ができる「引き出し」を! プロの合唱団員に求められる力

——プロの合唱団員として、どんな力が求められていると感じますか?

小林 リハーサルの時間がすごく限られているので、少ない時間で楽譜からいろんなことを読み取る能力や、自分で準備する力は必要だと思います。一つの演奏会でも3日間くらいのリハーサルで臨むことが多いです。

急な対応ができるように、いろいろな「引き出し」を持っておくことも求められているかなと思います。

——「引き出し」というのは、例えばどんなものですか?

小林 「もっと大きく」「音程を高く、低く」と言われたときに、自分の中でどうやったら求められている音色が出せるのかを知っておくことですね。

それから、指揮者の方からすごく抽象的な指示があることもあります。その言葉から「どういう音が必要なのか」を翻訳する。そのためには、いろんな曲や言葉に触れておくことも引き出しになるのかなと思います。

——東混の団員になるためのオーディションでも、そうした力が見られるのでしょうか?

大沢 パートによって求められることはそれぞれあると思いますが、合唱なので、既存のメンバーと調和を取れる声かどうか、ということはあるかもしれません。

ただ、東混はいろんな曲を歌うので、いろいろな「引き出し」があって、いろんな歌い方ができる人に入ってきてもらいたいという気持ちはありますね。私自身、入団したときにコンサートマスターの松﨑ささらさんから「もっといろいろな声を聞かせてほしい」と言われたことがあるんです。

——「いろんな声」というのは?

大沢 クラシックの王道の歌い方もあれば、歌謡曲ではまた違う歌い方がありますよね。声色や節回し、フレージング、音楽への乗り方も違う。いろんな曲の歌い方がそれぞれできることが大切なのかなと思います。

——例えば「柔らかく」「冷たく」と言われたら、どう声を変えるのでしょうか?

小林 私は大きくは息のスピードなのかなと思います。「柔らかく」と言われたら、窓ガラスを曇らせるような息の出し方。逆に「冷たく」と言われたら、窓が曇らないように細く息を出すとか。

あとは、顔の表情を少し変えるだけでも、音色に影響すると思います。

大沢 私は「距離感」と説明することがあります。音を生み出す場所をどこにイメージするかで、息の吸い方やスピードも変わってきます。ブレス、つまり歌う前にどう息を吸うかというところから違うかもしれませんね。

「腹筋100回」ではない! プロの歌声を支える健康管理

——お二人自身は、東混に入団してから「ここはもっと鍛えなければ」と思ったことはありますか?

大沢 思った以上に忙しくて、「こんなに毎日本番があるんだ」と驚きました。一度風邪をひいてしまうと、なかなか元の調子に戻らないので、自分のコンディションを整える能力をまず鍛えなければと思いました。

——「鍛える」というのは具体的にどういうことをされていますか?

小林 「腹筋100回!」とかそういうイメージかもしれませんが、ちょっと違います(笑)。体を固くしすぎず、息を吸うための筋肉の柔らかさを保つことを意識しています。ストレッチをしたり、余分な脂肪は落としたり。

それから、食事も大切です。「これを食べると胃が荒れる」ということがあって、胃が荒れると喉にも悪影響が出る。何でもかんでも好きなものを食べていいわけではないんだなと(笑)。

——本番前は、好きなものを我慢することも?

小林 ありますね。本番が終わってから、ご褒美として食べます(笑)。

大沢 私も入団当初は、とにかく体調を崩していました。呼吸器感染症にかかると、本当に声にダイレクトに影響しますし、鼻詰まり一つでも発声の仕方が変わってしまう。完全に元の状態に戻るまで時間がかかるので、「健康でい続けること」が自分の人生の課題なんじゃないかと思っています。

そのために整体や鍼に行ったり。声を整えるためだったら、できることは何でも試そうと思いました。やっぱり、体が楽器で、体が資本ですから。

——ほかにも日常的にしていることはありますか?

小林 私は入浴ですね。シャワーだけで済ませた日と、ちゃんと湯船に浸かった日では、翌日の声が違うような気がします。ちゃんと湯船に浸からないと、体が休まらないんだなと感じます。

大沢 体を冷やさないことも大事ですね。冷えると免疫も落ちますし。団員の中には、ハーブや漢方を日頃から取り入れている人もいます。

小林 健康法の情報交換は、けっこうありますよね(笑)。

大沢 先輩方に聞いて、「それ、試してみよう」とやってみたり。

小林 自分との相性もありますからね。いろいろ試して探って、いいものがあったら共有する。

大沢 すぐ実践しますね(笑)。

小林 先輩直伝の健康法もあります。

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演奏会情報
東京混声合唱団 住友生命いずみホール定期演奏会 No.31

日時: 2026年9月26日(土)15:00開演

会場: 住友生命いずみホール

出演: 相澤直人(指揮)、渡辺研一郎(ピアノ)

曲目: 信長貴富/混声合唱のための3つの禱歌《闇のなかの灯》、上田真樹/無伴奏混声合唱のための《メロディーズ・イン・ラヴェル》、相澤直人/金子みすゞの詩による5つの混声合唱曲《春がすみの向こふに》[初演]、土田豊貴/混声合唱とピアノのための《どんな鳥も…》

【公募合唱団との合同合唱】
相澤直人/さくらももこの詩による無伴奏混声合唱曲集《ぜんぶ ここに》より〈ぜんぶ〉(混声四部・ピアノ伴奏版)、混声合唱のための《合唱デザインー音楽が生まれる場所ー》[新作委嘱初演]

詳しくはこちら

特別演奏会 東混オールスターズ ~田中信昭メモリアル~

日時: 2026年10月23日(金)19:00開演

会場: 東京芸術劇場 コンサートホール

出演: 山田和樹、水戸博之、松原千振、大谷研二、髙谷光信、山田茂(指揮)、首藤健太郎(ピアノ)

曲目: S.ラフマニノフ/《ピアノ協奏曲第4番》より第2楽章(合唱版初演)(編曲:山田和樹)、北爪道夫/混声合唱のための《ことばの旅・Ⅰ》、芥川也寸志/混声合唱曲《お天道様・ねこ・プラタナス・ぼく》、K.ペンデレツキ/Agnus Dei、O.ビラシュ/息子よ、鴨が飛んでいる(編曲初演)(編曲:首藤 健太郎)、ウクライナ伝承歌/鶴(編曲初演)編曲:首藤健太郎、武満徹/混声合唱のための《風の馬》より

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ポッドキャストの視聴はこちら

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