
江波戸大樹さん(オーボエ)ーー吹奏楽出身、夢はオーケストラ奏者!

月刊誌『音楽の友』で、若手演奏家を紹介している連載「フレッシュ・アーティスト・ファイル」。当記事は雑誌のインタビューとはひと味ちがう切り口で、20の質問を通して演奏家たちの素顔を紹介していきます。第21回は、オーボエ奏者の江波戸大樹さんにご登場いただきました。

1941年12月創刊。音楽之友社の看板雑誌「音楽の友」を毎月刊行しています。“音楽の深層を知り、音楽家の本音を聞く”がモットー。今月号のコンテンツはこちらバックナンバ...
2001年生まれ、現在25歳。高校時代は、漫画『青のオーケストラ』(阿久井真 著/小学館刊)の舞台としても知られる千葉県立幕張総合高等学校のオーケストラ部で励み、その後プロ奏者を目指し音楽大学へ。昨年の日本音楽コンクールオーボエ部門では第2位、聴衆賞を受賞。オーケストラ奏者を目指し、全国各地で演奏活動を行う江波戸さん。8月末には自身初のリサイタルを開催されます。

千葉県出身。千葉県立幕張総合高等学校卒業後、大分県立芸術文化短期大学管弦打コース卒業。在学中に成績優秀者演奏会に、卒業時に卒業演奏会に出演。同短期大学卒業後、東京音楽大学卒業。これまでにオーボエを金光圭子、髙田喜夫、荒絵理子の各氏に、室内楽を宮本文昭、古部賢一、水谷上総の各氏に師事。2022年度東京音楽大学甲種奨学生。2024年小澤征爾音楽塾「子どものためのオペラ」及びセイジ・オザワ松本フェスティバル「室内楽勉強会〜木管アンサンブル〜」出演。第94回日本音楽コンクールオーボエ部門にて第2位及び岩谷(聴衆)賞、E.ナカミチ賞受賞。現在、桐朋オーケストラ・アカデミー研修過程に在籍するほか、フリーランスとして東京・関東で活動中。
いちばんのファンでいてくれる父親
Q1 オーボエを吹き始めたのは何歳?
中学1年生、12歳のときです。小学校の吹奏楽部ではフルートを吹いていたのですが、中学校では人数調整の都合でオーボエを吹くことになりました。オーボエは“世界一難しい楽器”ともいわれますが、なにも知らずにオーボエを始めてしまい、最初の2~3カ月は音を出すのに苦労しました。
Q2 幼少期の音楽体験を教えて。
父親が “聴き専”のクラシック音楽愛好家で、日曜日の朝はいつもリビングでクラシックが流れていました。父から曲の説明をされるわけではありませんでしたが、自然と一緒に聴いていたおかげで、音楽大学の授業で扱われる作品のほとんどはすでに知っている状態でした。高校でオーケストラ部に入ってからは、父とクラシック音楽について話す機会が増え、いまでも僕が出演するすべての演奏会に足を運んでくれています。
Q3 自身をどんな性格だと思う?
うーん…… 優しい性格だと思います。つねに思いやりを持つことを心がけています!
Q4 好きな食べ物は?
チーズ。とくにブルーチーズや熟成されたカマンベールチーズなど、ひと癖あるものが好きです。チーズ専門店などで買ってきたものを、そのままクラッカーにのせて食べています。
Q5 苦手な食べ物は?
ゴーヤです。ピーマンやコーヒーの苦味は好きなのですが、ゴーヤ独特のえぐみが少し苦手……。
Q6 本番前の勝負メシはある?
白米。以前に「(学業のほうの)試験当日はお米を食べてブドウ糖を頭に回したほうがいい」と聞いたことがあり、音楽の本番でもお米を食べることにしました。実際に白米を食べないと頭や身体がしっかり働かない感覚があります。お米のパワーは不可欠です!

ベートーヴェンの交響曲が大好き!
Q7 好きな作曲家は?
悩みましたが…… いちばん好きな作曲家はベートーヴェン。とくに交響曲が大好きです。古典派の時代、機能和声のなかで作曲することは制約も多かったと思うのですが、「交響曲第1番」からキャッチーなメロディを生み、交響曲としての新たな魅力を生みだした。それが本当にすごいと感じます。
来年はベートーヴェン・イヤーですが、いま、「VariOrchestra/ヴァリオーケストラ」というオーケストラで、ベートーヴェンとブラームスの交響曲全曲を演奏する企画に参加しています。
Q8 ベートーヴェンの交響曲でいちばん好きな曲は?
「交響曲第9番《合唱》」。第4楽章《歓喜の歌》のクライマックスに向かうまでの長い過程が見事に計算されていて、その構造のすばらしさにいつも感動します。
Q9 いつか演奏してみたい曲は?
ストラヴィンスキー《春の祭典》です。技巧的に非常に難しい曲ですが、オーケストラの演奏会を聴きに行くたびに「自分も演奏してみたい」という意欲が掻き立てられます。イングリッシュホルンにもおもしろいソロがあって、いつか挑戦してみたい一曲です。
Q10 憧れのアーティストは?
師匠でもある荒絵理子先生(東京交響楽団首席オーボエ奏者)です。荒先生の演奏は、心の底から湧きでた感情をそのまま音にされているように感じます。オーケストラ奏者は多種多様な表現ができなくてはいけないと日々思っているのですが、荒先生の演奏を聴くと、表現しているというより、いろいろな感情を知っていてそれを客席に届けてくれる、という感覚を抱きます。いつか自分もそんな演奏ができるようになりたいと憧れています。
Q11 「Q10」で挙げたアーティスト・荒絵理子さんの演奏でお気に入りのものは?
J.シュトラウス2世(山洞智編)《こうもり変装曲》。情緒豊かなこの作品を、荒先生はコロコロと表情を変えて演奏されていて、場面ごとの細やかな表現の違いに驚きを隠せませんでした。
Q12 練習にルーティンはある?
ロングトーンは必ず行ないますね。まっすぐ長い音を出すことで安心するというか…… 瞑想のように心が整う感覚があります。
Q13 練習を「つらい」と感じたことはある?
音楽大学での4年間は苦しかったですね。
高校生までは楽しむために練習をしていましたが、大学に入学してからは将来を見据えたプロになるための練習へと変わり、そこで本当の意味でオーボエの難しさを痛感しました。ですが、「僕には音楽しかない」と思っていたので、よい意味で「背水の陣」だったのかもしれません(笑)。



音楽をやめる選択肢はなかった
Q14 丸1日お休みがあったらどう過ごしたい?
リード作りからも解放されるなら、旅行に行きたいですね(笑)。知らない土地に行くのが好きで、そこに暮らす人々の暮らしを想像するのが愉しいです。
Q15 最近感動した舞台やアート体験はありますか?
宝塚歌劇団(星組)の公演『恋する天動説/DYNAMIC NOVA』。ピット内で、オーケストラ奏者として参加したのですが、完全にその世界観に魅了されてしまいました。すごく楽しく仕事ができましたし、推しメンバーができるほど感動しました。
Q16 お気に入りの本は?
東野圭吾さんの『ガリレオ』シリーズ(『ガリレオの苦悩』など)。中学生のときに初めて読んだのですが、とてもおもしろくて、お気に入りです。
Q17 好きな映画やドラマを教えて。
ドラマ『SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~』です。放送当時から大好きで、映画化になったときは映画館にも足を運びました。その後配信でも3〜4周は見返しています(笑)。
Q18 会ってみたい作曲家は?
ベートーヴェン! と言いたいところですが、モーツァルトです。オーケストラの入団試験やオーディションでは、必ずといってよいほどモーツァルトの協奏曲は課題になります。あれほど内容が濃く完成された曲を、どのような考えやインスピレーションで書いていたのか、話を聞いてみたいですね。
Q19 これまで音楽を続けてこられた理由は?
音楽が好きだったから、としかいえませんね。小学生のころから吹奏楽部に所属して、中学、高校に入ってもぜったいに楽器を吹きたいと思っていました。音楽をやめるという選択肢は自分のなかにはありませんでした。続けられたというよりも、当たり前に続けていた、という感じです。
Q20 20年後どうなっていたいですか。
オーケストラに所属して、オーケストラ奏者として活躍していたいです。そして、オーボエを通して様々な感情や情景を豊かに表現できる音楽家になりたいです。
いまは将来大きな樹を育てるための「土壌作り」の時期だと考えています。たくさん経験を積み、自分の音楽表現へと還元していくことが目標です。

日時・会場:8月29日15時・ヨコスカ・ベイサイド・ポケット
共演:遠藤直子(p)
曲目:テレマン《無伴奏オーボエのための12の幻想曲》から「 第2番」、パスクッリ《ベッリーニへのオマージュ》、プーランク「オーボエ・ソナタ」、シルヴェストリーニ 《6つの習作》から「第1曲〈トゥルヴィルのロッシュ・ノワール・ホテル〉」、ゴーベール《田園風間奏曲》、ドラティ「協奏的二重奏曲」
問合せ:横須賀芸術劇場 046-
823-9999
『音楽の友』2026年8月号(7月18日発売)の連載「フレッシュ・アーティスト・ファイル」では、江波戸大樹さんのインタヴュー記事を掲載。ぜひ併せてご覧ください!
「音楽の友」2026年8月号記事詳細はこちら





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