読みもの
2018.05.18
渡辺真弓のバレエに恋して 第2幕

映画館でグッと近くなる! バレエの楽しみ

必ずしも劇場に足を運ぶことだけが舞台鑑賞の方法ではなくなっています。
各国の劇場が映画館での「ライブ・ビューイング」というツールを使って幅広い人に向けて、各劇場の魅力的な演目を上映しているのです。
日本ではなかなか観れない海外の最新のバレエ舞台を映画館の大スクリーンで鑑賞したら、きっとあなたもバレエのとりこに!

渡辺真弓
渡辺真弓 舞踊評論家、共立女子大学非常勤講師

お茶の水女子大学及び同大学院で舞踊学を専攻。週刊オン・ステージ新聞社(音楽記者)を経てフリー。1990年『毎日新聞』で舞踊評論家としてデビューし、季刊『バレエの本』(...

Laura Morera as The Queen of Hearts in Christopher Wheeldon's Alice's Adventures in Wonderland for The Royal Ballet ©Johan PerssonRoyal Opera House, 2013_preview

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映画館で見るバレエのライブ・ビューイングが人気を呼んでいる。海外のオペラハウスで上演されている最新の舞台を大スクリーンで体験。休憩時間も取られ、本番同様の臨場感が味わえるのが魅力だ。
現地にいつでも飛んで行ける人ばかりではないので、最新の舞台で憧れのスターたちの名演を間近に見られるのは大変うれしい。
また生の舞台では見られないようなダンサーの刻一刻と変わる表情の変化やデザインの凝った衣裳の細部まで手に取るように見えるのが、ライブとは違った
私も舞台だけなく、映画館でバレエを楽しんでいる一人だが、一般3,600円 学生2,500円というお値段も、バレエ入門者にとって敷居が低くおススメである。

ひと口にライブ・ビューイングと言っても、身近に見られるものにはどんなものがあるのだろうか。
定期的に上映しているのは英国ロイヤル・オペラ・ハウス・シネマとボリショイ・バレエinシネマ。
それぞれの特色を比べてみると、英国ロイヤル・バレエは、シェイクスピアの国のお国柄を反映して、ダンサー1人1人が俳優のよう、その演技にはまるでお芝居を見ているようなリアリティがある。一方ボリショイ・バレエは、ソリストから群舞に至るまで、ダイナミックな跳躍や回転の技巧であっと言わせ、迫力ある舞踊シーンからは目が離せない。

英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2017/18

2013年のロイヤル・バレエ『くるみ割り人形』より
Meaghan Grace Hinkis as Clara in The Nutcracker, The Royal Ballet ©ROHTristram Kenton, 2013. Image by AKA ©ROH 2016_preview

英国ロイヤル・オペラ・ハウスは昨年12月の『不思議の国のアリス』を皮切りに、バレエは全6作品が上映される。『アリス』では、作曲家のジョビー・タルボットや振付家のクリストファー・ウィールドンのコメントも挟まれ、オペラハウスが一丸となって、このプロジェクトに取り組んでいる姿勢がひしひしと伝わってきたのがよかった。案内役には元プリンシパルのダーシー・バッセルが登場、和やかな話しぶりで視聴者をひきつける。

ちなみに同作品は、今秋、新国立劇場のバレエのオープニングに上演されることが決まっている。

これから見られる演目は3本!

6月の<バーンスタイン・センテナリー>は、今年生誕100年を迎えた偉大な作曲家レナード・バーンスタインの楽曲に触発されて、ロイヤル・バレエで活躍する3人の現代振付家が創作したトリプル・ビル(現地上演3〜4月)。

6月はもう1作。英国バレエの巨匠マクミランの名作『マノン』(現地ライブ5月3日)である。美少女マノンと騎士デ・グリューの悲しい駆け落ちの物語を、フランスの作曲家ジュール・マスネのロマンティックな旋律に乗せて描いたドラマティック・バレエ。実はこの作品の音楽は、マスネのさまざまな楽曲を編曲したもので、マスネの代表作であるオペラ《マノン》からは1音も使われていない。それにもかかわらず、あたかもこのバレエのために書かれたかのようにどの場面も踊りと音楽がしっくり溶け合っている。こういったマクミランの音楽的手腕もこのバレエの大きな魅力なので、注目してほしい。

20世紀バレエの傑作と名高いマクミラン振付の『マノン』。
©2014 ROH. Photographed by Alice Pennefather_preview

最後の8月は、チャイコフスキー作曲のバレエの代名詞『白鳥の湖』新制作(現地ライブ予定6月12日)。プティパ/イワーノフの古典的な振付に新進気鋭の振付師、リアム・スカーレットが新たに手を加え、ロイヤル・バレエで多くの美術を出がけるジョン・マクファーレンが参加した期待の新演出版である。主役のオデット=オディールと王子に予定されているのは、あでやかな美貌のマリアネラ・ヌニェスと端正な踊りが魅力のムンタギロフの看板ペア。これは見逃せない。

新制作『白鳥の湖』マクファーレンが手掛けた第2幕のための舞台デザイン
©John Macfarlane

ボリショイ・バレエinシネマ2017−2018

今シーズンは、昨年12月の『海賊』を皮切りに全8本のラインナップ。英仏露語を自在に操るボリショイ・バレエの広報担当、カテリーナ・ノヴィコワ女史の作品紹介やインタビューもすっかりおなじみとなった。このシリーズでも、幕間に作曲家や芸術監督が登場して、初演のエピソードを披露してくれるのが実に興味深く、休憩時間であることを忘れてスクリーンに見入ってしまうことがよくある。

自動人形に恋してしまう青年・フランツとその恋人スワニルダとの三角関係?をえがく名作『コッペリア』
©Pathe Live

これから見られるのは6月のドリーブ作曲『コッペリア』。音楽も美しく、人形振りが楽しめるロマンティック・バレエである。昨年急逝したロシアの名舞踊家セルゲイ・ヴィハレフが名匠プティパの原振付を復元した制作だけにファンも初心者も必見。主役は未発表だが、長い歴史と伝統を誇るボリショイだけにどのソリストが登場しても満足のいくステージを見せてくれることだろう。

英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2017/18
イベント情報
英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2017/18

『バーンスタイン・センテナリー』 6月8日(金)~

『マノン』 6月22日(金)~

『白鳥の湖』 8月24日(金)~

◆会場◆ 全国の各映画館

◆料金◆ 全席指定 大人3,600円(税込)、学生2,500円(税込)

ボリショイ・バレエ in シネマ Season 2017-2018
イベント情報
ボリショイ・バレエ in シネマ Season 2017-2018

『コッペリア』 2018年6月27日(水)19:15~ コッペリア
◆会場◆ 
北海道 | ユナイテッド・シネマ札幌 宮城県 | TOHOシネマズ 仙台
東京都 | TOHOシネマズ 日本橋、TOHOシネマズ 新宿、T・ジョイ PRINCE 品川、109シネマズ二子玉川、TOHOシネマズ 府中
神奈川県 | 横浜ブルク13、TOHOシネマズ 川崎 千葉県 | シネマイクスピアリ
埼玉県 | ユナイテッド・シネマ浦和 愛知県 | ミッドランドスクエアシネマ
大阪府 | 大阪ステーションシティシネマ 京都府 | MOVIX京都
兵庫県 | 神戸国際松竹 岡山県 | TOHOシネマズ 岡南
福岡県 | T・ジョイ博多 熊本県 | ユナイテッド・シネマ熊本

※大阪府の映画館では、条例により終映が22時を過ぎる場合、 18歳未満の方は保護者同伴でも入場不可。

◆料金◆ 全席指定 大人3,600円(税込)、学生2,500円(税込)

渡辺真弓
渡辺真弓 舞踊評論家、共立女子大学非常勤講師

お茶の水女子大学及び同大学院で舞踊学を専攻。週刊オン・ステージ新聞社(音楽記者)を経てフリー。1990年『毎日新聞』で舞踊評論家としてデビューし、季刊『バレエの本』(...

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