
ピーター・バラカンのセレクトによる「平和を祈る音楽」を、アートビジネスを支援するギャラリーで聴く

ONTOMOの連載「ピーター・バラカンの新・音楽日記」でもおなじみ、ピーター・バラカンさんが出前DJをするイベント〈ピーター・バラカンの出前DJ at KKAG~第16回 「平和を祈る」音楽特集〉が4月8日、写真ギャラリー「Kiyoyuki Kuwabara Accounting Gallery」(KKAG)で開催されました。
このイベントを主催するKiyoyuki Kuwabara Accounting Galleryは、なんと会計事務所を兼ねた写真ギャラリーらしい……! イベントのリポートに続いて、ギャラリーの代表で税理士・公認会計士の桑原清幸さんにお話を伺いました。

東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
まずは、写真ギャラリー「Kiyoyuki Kuwabara Accounting Gallery」(KKAG)での16回目の開催となる「ピーター・バラカンの出前DJ at KKAG」をレポートしよう。
今回のテーマは、「平和を祈る」。イランやウクライナなど世界各地で起こる紛争の行方が案じられるなか、バラカンがジャンルや年代を横断してセレクトした音楽を紹介し、平和について考える時となった。
冒頭では、昨今の世界情勢、とりわけイスラエル軍の攻撃継続に触れながら、国家や政府のスタンスと、そこに生きる個人を同一視してはならないと強調。
その視点を起点に、Playing For Changeバージョンの「War / No More Trouble」「Peace Train」、オージェイズ「Love Train」、アル・グリーンの「People Get Ready」が順番に登場した。
Playing For Change:War / No More Trouble
アル・グリーン:People Get Ready
続いて、ステイプル・シンガーズ「Respect Yourself」、ビル・ウィザーズ「Lean On Me」の音楽を聴きながら、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争といった、それぞれの音楽が生まれた当時の世界情勢を振り返る。
後半では、テデスキ・トラックス・バンドによる「Ohio」から、ベトナム反戦運動や学生射殺事件へと話を広げられた。ジョー・コッカー周辺の「Space Captain」「Give Peace a Chance」、サブデューズ「One Word Peace」、ジョニ・ミッチェル「Shine」、マイケル・フランティ「Bomb the World」、そして最後のスティーヴィー・ワンダーとTake 6による「Love’s in Need of Love Today」まで、戦争、愛国心、メディア、信仰・宗教、連帯をめぐる思索を重ねた。
「Love’s in Need of Love Today」は、2001年に9.11の追悼音楽番組『America: A Tribute to Heroes』で披露され、悲しみが広がりテロの傷跡が残る世界に、スティーヴィーは報復ではなく「愛が必要」というメッセージを届けたというエピソードも紹介された。
ロンドン出身のバラカンは、ユダヤ系ポーランド人の父親、イギリス人とミャンマー人の母親のもとに生まれた。
「1つの国だけを愛すると、世界を分断させてしまう。愛国心が悪いとは誰も思わないだろうけど、いき過ぎると反動が必ず出てくる。ぼくの親は、それぞれの国籍を持っていて、自分はロンドンで生まれながらも、いまひとつ自分をイギリス人だと思えなかった。自分のアイデンティティを国家に重ねたことは一度もなくて。だから、妙に端的になれる」
自身の出自に触れつつ、国家に自分のアイデンティティを重ねない感覚も語り、だからこそ音楽を通して距離を取り、考え続けることの大切さを示した。
会計事務所と融合したアートギャラリー
このイベントシリーズを主催するKiyoyuki Kuwabara Accounting Galleryは、会計事務所を兼ねている。代表の桑原清幸さんは税理士・公認会計士で、クリエイターの税金相談や確定申告も行なっている。

桑原 この写真ギャラリーは2018年にスタートしました。今回のイベントシリーズのきっかけは、私自身が中学生の頃から大ファンだったバラカンさんとのご縁です。
私はバラカンさんのラジオをよく聴いていました。バラカンさんが写真に興味をお持ちなのを知っていたので、ラジオ番組にこのギャラリーで開催する展示の情報をお送りしてみたところ、取り上げてくださったんです。その後、バラカンさんのDJイベントに伺って直接お礼をお伝えできたのがきっかけでした。そこから現在まで7年ほどのお付き合いになります。
写真ギャラリーがコミュニティに
このギャラリーは、展示会場という役割にとどまらずコミュニティになっているという。
桑原 このギャラリーでは、写真の展示のテーマに合う内容で、音楽や映画のイベントを企画しています。新宿の老舗ジャズ喫茶DUGのオーナーで、2024年に逝去された中平穂積さんの写真展では、中平さんが70年代に撮影したマイルス・デイビスなど著名なミュージシャンの写真が展示された空間で、ジャズの生演奏をしていただきました。このギャラリーは真空管アンプも置いてあるので、音楽好きの方にも楽しんでいただけるはずです。
私は30代で初めてカメラを持った人間で、もともと写真業界に人脈があったわけではありません。事務所を立ち上げる際、「好きな写真を飾れる空間にしたい」と相談しているうちに話がふくらみ、現在のようなギャラリー形態になりました。
いざ始めてみると、プロ・アマチュア問わず多くの写真家さんが見に来てくださり、一緒にお酒を飲んだり話したりするなかで、次の企画がつながっていく。そんな狭くも温かいコミュニティができています。
特に、若手や無名の方が展示できる場所は限られています。大手メーカー系のギャラリーはハードルが高いですし、レンタルギャラリーは費用がかさみます。そういった方々が自由な表現を試せる場所でありたいと考えています。
イベントの規模としては、30人前後がちょうどいい。これ以上の人数になると、アーティストと気軽に話せる「双方向性」が失われてしまいますから。写真も、誰がどんな思いで撮ったのかという「人間性」を知ることで、より面白くなる。作家さんが在廊して、リラックスした立ち位置でお客さんと話せる、そんな場所をこれからも守っていきたいですね。

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