礒絵里子が多彩な室内楽編成のモーツァルト/シューマンで魅せる春の公演
多彩なソロ演奏に加え、高橋多佳子(ピアノ)、新倉瞳(チェロ)との「椿三重奏団」や、従妹・神谷未穂との“デュオ・プリマ”での演奏活動、さらにはアウトリーチ活動やFMヨコハマ「礒絵里子のSEASIDE CLASSIC」のパーソナリティを務めるなど、幅広い活動を続けるヴァイオリニストの礒絵里子。
この春も積極的に活動を続けているが、その中から注目の公演である「春爛漫、モーツァルトとシューマンの芳馥を奏でる礒絵里子&Friends Vol.2」(4月5日、東京・王子ホール)の公演について、詳しく話を伺った。
1956年福島県福島市生まれ。早稲田大学卒業。在学中からフリーランスの編集者&ライターとして仕事を始める。1990年頃からクラシック音楽の取材に関わり、以後「音楽の友...
——この「Friends」の企画は第2回目となりますね。
礒 2024年からスタートしたものです。コロナ禍の後、4人以上の室内楽の演奏機会が少なくなってきたと感じていたところ、「もっと室内楽の演奏をやってください」と活動を支援してくださるという方が現れたことをきっかけに、これまでの枠を超えたコンサートに取り組もうと思い、始めました。
第1回は「その時に自分が一緒に弾いてみたい方」というテーマでお声をかけたのですが、音楽性もテクニックも素晴らしいメンバーで、充実したコンサートになりました。
礒絵里子
桐朋学園大学卒業後、その才能を高く評価したI.オイストラフ氏に招かれ、文化庁芸術家在外派遣研修員としてブリュッセル王立音楽院に留学し、修士課程大賞を受賞し首席修了。マリア・カナルス国際コンクールほか国内外のコンクールで入賞。オーケストラと共演、宮崎国際音楽祭へは毎年参加、「題名のない音楽会21」「アインシュタインの眼」「クラシック倶楽部」ほかテレビ・ラジオ出演も多く、2010年よりFMヨコハマ「礒絵里子のSEASIDE CLASSIC」のパーソナリティを務めている。
ソロ活動に加え、「デュオ・プリマ」「EnsembleΦ(ファイ)」「椿三重奏団」「デュオ・パッシオーネ」など室内楽でも多彩な演奏活動を展開。一財)地域創造公共ホール活性化支援事業登録アーティスト並びに「こどものためのクラシック」登録アーティスト(ソニー⾳楽財団)としてアウトリーチ活動にも積極的に参加している。
デビュー以来11枚のCDをリリース、2020年2月に発売された椿三重奏団のCDは「レコード芸術」誌特選盤に選出された。
真摯な演奏への取り組み、確かな技量に基づいたヨーロッパ仕込みの洗練された感性には定評があり「気負いのないしなやかな活動ぶりが、クラシック音楽シーンで着実に存在感を放っている」など各媒体で高く評されている。洗足学園大学講師として後進の指導にもあたっている。
——4月の王子ホールでの公演では、「椿三重奏団」の高橋さん、新倉さんに、ヴィオラの安藤裕子さんを迎えた4人での公演をされます。安藤さんとのお付き合いは長いのですか?
礒 学校は私が桐朋学園音楽大学、安藤さんは東京藝術大学と違うのですが、実は同い年で普段から「あんちゃん」と呼ぶくらい親しい仲です。これまでも宮崎国際音楽祭などで一緒になったり、私がヴィヴァルディの《四季》を弾き振りする時には、まずは彼女に声をかけて、一緒に演奏してもらったりしていました。今は紀尾井ホール室内管弦楽団のメンバーでもあり、室内楽の経験も豊富なので、一緒に演奏したいと思って声をかけました。
——今回はプログラミングも興味深いです。まず、前半はモーツァルトの「二重奏」から始まり、「ディヴェルティメント K.563」(弦楽三重奏、第6楽章のみ)、そして「ピアノ四重奏曲第1番 ト短調」と続きます。次第に楽器が増えていくアイディアが面白いですね。
礒 ヴァイオリンとヴィオラの女声の音域のデュオから始まり、それに低音のチェロが加わっての弦楽三重奏、と最初の2曲は弦楽器のみの響きを楽しんでもらう趣向です。
そしてピアノが登場してピアノ四重奏。ピアニストは音の数も多いし1番出番も多くて大変と高橋さんがよく言っているので、今回は弦楽器奏者の出番を多くしてみました。
——聴き手として言うと、ヴァイオリンとヴィオラだけの作品というのはとても興味があります。それぞれの楽器の個性がよく分かりそうです。
礒 安藤さんは経験豊富だし、音楽の掘り下げ方も深いので、こちらもとても刺激になります。よく「チェロは人間の声に一番ちかい」と言われますが、私はヴィオラこそ「人間の声にもっともちかい楽器」だと感じていて、ちょうど(女声の)アルトの印象にぴったりはまる楽器だと思いますので、そのあたりも楽しみです。
——モーツァルトもヴィオラを弾くのが好きだったようですね。
礒 そうなのですね。作曲家にはヴィオラが好き、あるいは内声の豊かさを意識している方が意外に多いと思っています。
——そして後半にはシューマンの傑作「ピアノ四重奏曲 作品47」が取り上げられますね。
礒 これもなかなか弾くチャンスが無い作品でしたので、ようやく手が届くという気持ちです。ピアノの多佳子さんの美しい音はシューマンにぴったりなので、彼女の演奏を聴く楽しみもあります。チェロの瞳ちゃんの、あの音色と歌心で第3楽章の冒頭を共に奏でるのも楽しみです。
——「椿三重奏団」でゲストを迎えることも多いのですか?
礒 これまではそうでもなかったのですが、ゲストを招いて一緒に演奏すると、私たちの新しい面も発見できるし、ふたたびトリオで演奏する時にも役立つ経験となりますね。
——チラシには10月の「Vol.3」の案内もすでにあって、そこでは弦楽五重奏曲の代表的な作品2曲が並んでいます。
礒 実は弦楽五重奏というジャンルはあまり手がけたことがなかったので、これも挑戦してみようと考えたプログラムです。
——秋も楽しみにしています。ありがとうございました。
日時: 2025年4月5日(土)14:00開演
会場: 銀座・王子ホール
出演: 礒絵里子(ヴァイオリン)、安藤裕子(ヴィオラ)、新倉瞳(チェロ)、高橋多佳子(ピアノ)
料金: 全自由席 5,000円 学生3,500円
問い合わせ: 王子ホールチケットセンター03-3567-9990
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