読みもの
2023.03.17
音楽ホール 最新事情2023~横浜みなとみらいホール

横浜みなとみらいホール~アーティストのプロデュース企画は必聴!海の見える遊音地

横浜みなとみらいホールといえば、著名アーティストが「プロデューサーinレジデンス」を務める新しい制度が大きな注目を集めています。今シーズンは藤木大地から反田恭平へバトンタッチされる時期で、二人のプロデュース公演は必聴でしょう。さらにパイプオルガン「ルーシー」の多彩な企画や、子どもから大人まで楽しめる企画が盛りだくさんで、さながら音の遊園地のよう。館長の新井鷗子さんに、お話を伺いました。

山崎浩太郎
山崎浩太郎 音楽ジャーナリスト

1963年東京生まれ。演奏家の活動とその録音を生涯や社会状況とあわせてとらえ、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。『音楽の友』『レコード芸術』『モーストリーク...

横浜みなとみらいホールの内観 ©平舘 平

この記事をシェアする
Twiter
Facebook
続きを読む

5月31日に25周年を迎える横浜みなとみらいホールは、横浜市を代表するコンサートホールとして親しまれている。

今年も、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(11/15)など世界の一流オーケストラの来日公演があり、渋谷のオーチャードホールとの提携によるNHK交響楽団の演奏会(7/8)なども行なわれる。

2023年度のラインナップを中心に、館長の新井鷗子さんにお話を伺った。

 

お話を伺った、横浜みなとみらいホール館長の新井鷗子さん(撮影:ヒダキトモコ)

「プロデューサー in レジデンス」が藤木大地から反田恭平へ。それぞれのプロデュース公演は要注目

独自事業の目玉となるのが、21年度にスタートした「プロデューサー in レジデンス」だ。プロデューサーに選ばれるのは、国内外で活躍する楽器奏者や歌手たち。

新井「指揮者とか作曲家は、そもそもプロデューサーみたいな仕事ですよね。そうではなく、自分の演奏を第一に考えている演奏家にも、これからはプロデューサーとしての企画力、社会に広く発信していく力が必要だと思います。そこで、藤木大地さんや反田恭平さんのような、クラシック音楽を社会とどう繋げていくかということへの意識が高い、皆さんのお手本となるような方に最初にお願いしたのです」

一昨年からこの任務にあたる藤木大地(カウンターテナー)は「ネットワークプロジェクト」を提唱し、「みなとみらいクインテット」を結成して全国のホールや劇場との連携を働きかけている。

 

初代「プロデューサー in レジデンス」の藤木大地(写真中央)は「みなとみらいクインテット」を結成し、全国のホールや劇場と連携することでネットワークを築いている ©藤本史昭

また4月には、大ホールで中川晃教、中村恵理、サラ・オレインや県内の音楽大学の合唱団、阪 哲朗指揮 山形交響楽団との「横浜うたまつり」をプロデュース。クラシック、ミュージカル、ポップス界からスター歌手が集結する。

7月には藤木の後任となる反田恭平、さらに務川慧悟という俊英ピアニスト2人と共演する「みなとみらいアコースティックス2023」(7/31)を開催する。

2代目となる反田は、24年3月に5日間にわたる「横浜みなとみらいホール25周年音楽祭」(24.3/20~24)をプロデュース、前館長の池辺晋一郎に委嘱した新作「指揮者のためのピアノ協奏曲(仮題)」を弾き振りで披露する予定だ。

プロデューサー in レジデンスの2代目となる反田恭平。7月から「オルガン道場」と題した企画で、ホールオルガニストの近藤 岳からオルガンを学ぶ。

実力と人気をかねそなえたアーティストを1時間に凝縮して楽しめる「ランチタイムコンサート」

クラシック・コンサートの初心者にもおすすめの公演としては、『みなとみらいランチタイムコンサート』がある。

新井「11時30分から約1時間のコンサートなので、気軽に楽しめるプログラムの音楽を聴いて、周辺で美味しいご飯を食べていただくこともできます。初めてコンサートに行かれる方にも、とてもおすすめです」

この「みなとみらいランチタイムコンサート」は、大ホール(4月公演のみ小ホール)で偶数月に開催される。4月の周防亮介(ヴァイオリン)と日本フィルハーモニー交響楽団のメンバー(弦楽五重奏)に始まり、中川英二郎(トロンボーン)と塩谷 哲(ピアノ)、2台ピアノのアン・セット・シス(山中惇史、高橋優介)、加耒 徹(バリトン)、ピアノと木管五重奏のアンサンブル、東京六人組辻 彩奈(ヴァイオリン)と萩原麻未(ピアノ)と、実力と人気をかねそなえたアーティストの演奏を、約1時間に凝縮して楽しめるのが魅力だ。

次世代育成も含めた親子で楽しめるイベントがたくさん

子どもと一緒に楽しめる催しには、まず5月に「こどもの日コンサート」がある。

新井「オーケストラ、パイプオルガン、児童合唱など、変化に富んだ楽しいプログラムです。中学生プロデューサーを公募して、準備から本番の運営まで携わってもらっていることも特徴です。こちらから音楽を届けるだけの一方通行ではなく、自分ごととして音楽というもの、コンサートというものを感じてもらおうという、次世代育成参加型のプロジェクトです」

 

「こどもの日コンサート」は、中学生プロデューサーが準備から本番の運営までを行なう次世代育成参加型のプロジェクトでもある ©藤本史昭

8月前半の「みなとみらい遊音地」(8/4~11)も、子どもから大人まで楽しめるイベントが盛りだくさんの催しだ。

新井「あとは、先の話になりますけれど、『クリスマス・パイプオルガン・コンサート2023』(12/22)。早めの時間に始まって、約1時間の気軽なコンサートなので、その後でクリスマス・ディナーをご家族で楽しんでいただける時間帯で、毎年ご好評をいただいています」

ホールと地域を結ぶ要、パイプオルガン「ルーシー」が大活躍

パイプオルガン「ルーシー」の荘厳な響きは、音楽に親しむ、ホールに親しむよいきっかけになるだろう。

新井「横浜は日本ではじめてオルガンが建造された街でゆかりが深く、当館でもさまざまなシーンで活用してきました。横浜みなとみらいホールの場合は創立以来、オルガン委員会を設けています。当館のオルガン事業について有識者の皆様に活動報告をしたり、フィードバックをいただいたりする委員会なんです。上記に述べた横浜とオルガンの結びつきから話は地域活動にも及びます」

地域との結びつきをつねに意識しているのだ。

新井「昨年第2代ホールオルガニストに就任した近藤 岳さんが、『10代のためのパイプオルガン・レッスン』を開始するなど、市民とオルガンをつないでくださっています。反田さんがパイプオルガンを学ぶ『オルガン道場』も7月に始まります。ほかにも『1ドルコンサート』や『1アワーコンサート』など、パイプオルガンを通じて音楽に触れていただく機会をたくさん設けています。ヨーロッパでは教会のような誰でも入れる場所に、パイプオルガンがあります。そんな存在にうちのホールと『ルーシー』がなってほしいのです」

第2代ホールオルガニストの近藤 岳さんが、市民とオルガンをつなぐ企画を多数行なっている。©平舘 平

近藤は、6月に開館25周年記念のコンサート「Dive into the Future」でエレクトロニクスの有馬純寿ほかと共演し、新旧の名作に加え、出演者全員での即興演奏を行なう。

新井「わざわざ訪ねていくのではなく、気軽に寄れる場所にしていきたいと思っています。みなさまも、ぜひ一度いらしてみてください」

横浜みなとみらいホールの外観。ホワイエからは海を眺められる ©平舘 平
横浜みなとみらいホール

[運営](公財)横浜市芸術文化振興財団

[座席数]大ホール2020席、小ホール440席

[オープン]1998年

[住所]〒220-0012  神奈川県横浜市西区みなとみらい2-3-6

[問い合わせ]Tel.045-682-2000(チケットセンター)

https://yokohama-minatomiraihall.jp/

山崎浩太郎
山崎浩太郎 音楽ジャーナリスト

1963年東京生まれ。演奏家の活動とその録音を生涯や社会状況とあわせてとらえ、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。『音楽の友』『レコード芸術』『モーストリーク...

ONTOMOの更新情報を1~2週間に1度まとめてお知らせします!

更新情報をSNSでチェック
ページのトップへ