ショパンコンクール歴代優勝者はどんな演奏をした? 歴史を振り返るプレイリスト
ショパン国際ピアノコンクールの歴代優勝者の演奏をまとめました! コンクールの歴史を振り返りながら、過去の優勝者の演奏を聴いて、ショパンコンクールへの想いをますます高めていきましょう。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
コンクールウォッチングあるある「迷子になってしまった」ときに
現在開催中の第18回ショパン国際ピアノコンクール。ライブ配信等で鑑賞中の方も多いと思いますが、こういう状態に陥ることもあるのではないでしょうか……ショパンばっかり聴いていて、どういう演奏がいいのかわからなくなってきた!! そんなときに少しでも参考になるように、歴代の優勝者の演奏をまとめました。
第1回~第4回の優勝者をさらっとチェック
では早速、歴代優勝者を振り返ってみましょう。
記念すべき第1回は1927年開催。ソ連のレフ・オボーリンが優勝しました。優勝後はモスクワ音楽院で教鞭をとり、アシュケナージの師としても知られることになります。ちなみに第1回のファイナリストには、あの作曲家ショスタコーヴィチの名前も。ピアノも得意だったのですね。
第2回で優勝したのは、アレクサンダー・ウニンスキー。出身は現在のウクライナ、キエフです。2位と同点につき、なんと最終結果はコイントスで決められました。このときの審査員席には、ラヴェルやシマノフスキといった作曲家も座ります。
続く第3回も、ソ連のヤコフ・ザークが優勝。ウクライナで生まれ、地元で学んだのち、モスクワ音楽院に移り、優勝後は母校の教師となりました。ペトロフやアファナシエフを輩出しています。
1949年の第4回では、優勝者が2人出ます。ポーランドのハリーナ・チェルニー=ステファンスカと、現在のアゼルバイジャン出身のベラ・ダヴィドヴィチ。初の女性優勝者となりました。
ハリーナ・チェルニー=ステファンスカによるショパンのポロネーズ集
ベラ・ダヴィドヴィチによるショパンのピアノ協奏曲
第5回(1955年)アダム・ハラシェヴィチ
第5回からはコンクールでの演奏とともに紹介します。
1955年に開催された第5回の優勝者、ポーランド出身のアダム・ハラシェヴィチは、今回審査員を務めています。アシュケナージをおさえて優勝したことで話題となりました。このコンクールでは日本人で初めて、田中希代子が10位に入賞を果たします。
第3ステージ ピアノ協奏曲第1番より第2楽章
第6回(1960年)マウリツィオ・ポリーニ
続く第6回では、マウリツィオ・ポリーニが優勝。イタリア出身の彼は18歳でショパンコンクールに挑み、審査員全員一致で優勝したといいます。
第1ステージ ポロネーズ
第2ステージ ピアノ・ソナタ第2番より第1楽章
第3ステージ ピアノ協奏曲第1番より第1楽章
第7回(1965年)マルタ・アルゲリッチ
第7回で優勝したのはマルタ・アルゲリッチ。アルゼンチン出身の彼女は、ショパンコンクールの前にすでにブゾーニ国際ピアノコンクールやジュネーブ国際ピアノコンクール女性ピアニスト部門で優勝していました。今回は審査員を務める予定でしたが、急病の友人ネルソン・フレイレに付き添うため、辞退しましたね。この回で、中村紘子が第4位に入賞します。
第1ステージ エチュードOp.10 No.1
第3ステージ ピアノ・ソナタ第2番より第4楽章
ファイナル ピアノ協奏曲第1番より第3楽章
第8回(1970年)ギャリック・オールソン
第8回には、アメリカ出身でジュリアード音楽院で学んだギャリック・オールソンが優勝します。195cmの長身ピアニストです。この回では、内田光子が第2位、今回審査員を務めているピオトル・パレチニが第3位に入賞しました。
第1ステージ ポロネーズOp.44
第2ステージ スケルツォOp.54
第9回(1975年)クリスティアン・ツィメルマン
ポーランド出身のクリスティアン・ツィメルマンは、第9回で史上最年少の18歳で優勝し、母国を熱狂させました。優勝後はキャリアを積み、1996年からはバーゼル音楽院で教鞭をとったほか、親日家としても知られています。このときの第2位は今回の審査員、ディーナ・ヨッフェでした。
第1ステージ エチュード Op. 25 No. 4
第2ステージ マズルカ Op. 24 No. 4
第10回(1980年)ダン・タイ・ソン
第10回では、ベトナム出身のダン・タイ・ソンがアジア人として初めて優勝を果たします。ハノイの音楽学校を卒業したのち、モスクワ音楽院で研鑽を積みました。イーゴ・ポゴレリッチのスキャンダルもこの年のこと。また、第5位に海老彰子とエヴァ・ポヴウォッカと、今回の審査員2名が入賞しています。
第1ステージ ノクターン Op. 27 No. 2
ファイナル ピアノ協奏曲第2番より第1楽章
第11回(1985年)スタニスラフ・ブーニン
スタニスラフ・ブーニンが優勝した第11回。第3位は今回の審査員クシシュトフ・ヤブウォンスキでした。ブーニンはONTOMOのインタビューで、ショパンについて「ショパンの楽譜には、人生そのものを理解するための鍵が隠されています。そして、渦巻く感情がそのまま表されている。それがどんな心情、体験を記録しているのかを見ていくと、自分の生活、人生と重なり合う部分が見つかるはずです」と語っています(全文はこちら)。
第2ステージ ワルツ Op. 34 No. 3
第12回(1990年)該当者なし
第12回では、優勝者がいませんでした。今回の審査員でもある第2位のケヴィン・ケナー(アメリカ)が最高位となります。日本人の活躍も目立ち、第3位に横山幸雄、第5位に高橋多佳子が入賞しました。そして、ファイナリストには及川浩治、フィリップ・ジュジアーノ、田部京子、有森博が名を連ねます。
第13回(1995年)該当者なし
続く第13回も第2位のフィリップ・ジュジアーノ(フランス)、アレクセイ・スルタノフ(ロシア)が最高位となります。ジュジアーノは第12回ではファイナリストでした。今回審査員を務めていますね。日本からは宮谷理香が第5位に入賞(「歌、レガート、ルバートとは? ピアニスト宮谷理香がショパンの演奏法を動画で解説!」はこちら)。
第14回(2000年)ユンディ・リ
2大会ぶりの優勝者となったのは、中国出身のユンディ・リ。コンクール優勝後はドイツのハノーファー音楽大学で研鑽を積み、2006年からは香港に移ります。今回の審査員サ・チェンが第4位に入賞しました。
第1ステージ エチュード Op. 25 No. 11
第3ステージ マズルカ Op. 33 No. 4
第15回(2005年)ラファウ・ブレハッチ
第15回では、ポーランド出身のラファウ・ブレハッチが優勝し、マズルカ賞、ポロネーズ賞、コンチェルト賞、ソナタ賞も併せて獲得。今回の審査員長カタリーナ・ポポヴァ=ズィドロンに師事し、ショパンコンクール以前には浜松国際ピアノコンクールでも1位なしの2位に入賞しています。
第1ステージ ノクターンOp. 62 No. 1
第2ステージ ポロネーズOp. 53《英雄》
第3ステージ マズルカOp. 56 No. 3
第16回(2010年)ユリアンナ・アヴデーエワ
アルゲリッチ以来45年ぶりの女性優勝者となったのは、第16回のユリアンナ・アヴデーエワ。ロシア出身で、モスクワのグネーシン音楽学校、スイスのチューリッヒ音楽大学、コモ湖国際ピアノアカデミーで学びます。
第1ステージ ノクターンOp. 62 No. 1、エチュードOp. 10 No. 10、Op. 25 No. 11
第2ステージ ファンタジー Op. 49、マズルカOp. 30 No. 1
第3ステージ ピアノ・ソナタ第2番、ポロネーズ・ファンタジーOp. 61
ファイナル ピアノ協奏曲第1番
第17回(2015年)チョ・ソンジン
前回優勝したのは、韓国のチョ・ソンジン。2009年に最年少の15歳で浜松国際ピアノコンクールで優勝、2011年にはチャイコフスキー国際コンクールピアノ部門で第3位に入賞、からのショパンコンクールで優勝という輝かしい経歴の持ち主となりました。このときのファイナリストには、今回出場している小林愛実、シモン・ネーリング、ジョージ・オソキンスの名も。
予備予選 ノクターンOp. 48 No. 1 、ファンタジー Op. 4、マズルカOp. 33 No. 4、エチュードOp. 10 No. 10、エチュードOp. 10 No. 2エ、チュードOp. 10 No. 1
第1ステージ ノクターンOp. 48 No. 1
第2ステージ ポロネーズOp. 53 、ピアノ・ソナタ第2番
第3ステージ マズルカOp. 33 No. 4 、プレリュードOp. 28 No. 12、Op. 28 No. 17
ファイナル ピアノ協奏曲第1番
これまでの優勝者の演奏はいかがでしたでしょうか? 連載「じっくりショパコン」の審査員インタビューでは、聴き手として本当にショパンらしい音楽を見出すためには、どこに気をつければよい? 本物を見つけるために気にかけるべきポイントは? という質問にも答えてもらっています。迷子になってしまったときには、こちらも参考にしてみてくださいね。
関連する記事
-
記者会見でショパンコンクールの課題曲変更点が発表! 小林愛実も登場し思い出を語る
-
ショパンの「雨だれ」はここで生まれた? マヨルカ島へ美が生まれた暮らしを探す旅
-
音メシ!作曲家の食卓#7 ショパンがパリの最高級店で同郷の友と堪能した魚料理
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly