インタビュー
2022.07.29
宝塚OGが語る、音楽と私 Vol.12

朝夏まなと「音楽のない世界は想像できない」~元気をもらえる舞台『モダン・ミリー』

宝塚歌劇団の人気OGが、お気に入りの音楽について語るインタビュー連載。
第12回は、元宙組トップスターの朝夏まなとさんが登場。9月から始まる舞台『モダン・ミリー』の魅力や聴かせどころに加えて、幼少期からさまざまな楽器を演奏していたことや宝塚でブラームスを演じた思い出、好きな音楽についてたっぷりと語ってくれました。

取材・文
NAOMI YUMIYAMA
取材・文
NAOMI YUMIYAMA ライター、コラムニスト

大学卒業後、フランス留学を経て、『ELLE JAPAN(エル・ジャパン)』編集部に入社。 映画をメインに、カルチャー記事担当デスクとして勤務した後、2020年フリーに...

撮影:各務あゆみ

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コメディシーンやダンスナンバーで明日への活力をもらえる作品

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——ミュージカル『モダン・ミリー』は、1920年代のNYを舞台に、ヒロインのミリーが恋や仕事に奮闘する姿をポップに描いた作品です。原作は1967年のジュリー・アンドリュース主演の同名映画ですが、この映画を見たご感想は?

朝夏 田舎からでてきたミリーが、都会で自分の道を切り拓いていく姿が印象的でしたね。ジュリー・アンドリュースが可愛かったし、音楽も素晴らしくて、舞台になるとどうなるんだろうとワクワクしました。故郷を離れて都会に出てくるミリーが、佐賀から夢を抱いて宝塚に入った自分と重なる部分もありました。あ、宝塚は都会とはいえませんね(笑)。

朝夏まなと(あさか・まなと)
佐賀県出身。2002年、宝塚歌劇団へ入団。2015年に宙組トップスターに就任。代表作に『翼ある人々』『王家に捧ぐ歌』『エリザベート』『神々の土地』など。2017年に退団後、『マイ・フェア・レディ』『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』などで活躍している。

朝夏さんの新作舞台『モダン・ミリー』は、1967年に公開された同名映画を舞台化したミュージカル・コメディ。楽曲をほぼ一新したブロードウェイ版は、2002年にトニー賞作品賞ほか5部門に輝き、大都会ニューヨークで個性豊かな人々と共に成長していくミリーを、名曲揃いな歌やダンス、芝居で魅せる。2020年4月の開幕直前に残念ながら公演中止となった本作品がついに、シアタークリエで上演となる。

——ブロードウェイミュージカルらしいポジティブな楽曲と華やかなダンスシーンがみどころですね。

朝夏 ミリーを筆頭に個性的なキャラクターも多いし、それぞれの衣装もカラフルで華やかなんです。オープニングの田舎出身のミリーがNYの街に染まるシーンは、舞台ならではの魅力が楽しめると思います。さらにセットもすごくて、シアタークリエに3階建てのセットが作られました。

——3階建てのセットとは想像するだけでもゴージャスです。

朝夏 それぞれの階で個性豊かな人たちがお芝居をするのは、見ているだけで楽しいですよ。私は2年前、そのセットを見ることができただけに、中止になったときは本当に悔しかったので、今回上演できるのがすごく嬉しいですね。

稽古をしていても前向きになれると語る朝夏さん。

——舞台では、朝夏さんが宝塚のトップスター時代に相手役だった実咲凛音(みさき・りおん)さんが、ミリーの親友役で出演します。今回は女性の役同士としての共演ですが。

朝夏 実咲とは付き合いが長いので、もう“阿吽の呼吸”です(笑)。お互いに相手がこうきたらこうくるという関係性ができ上がっているんですよ。それは、性別が変わっても同じだと思います

——朝夏さんにとって、聴かせどころのナンバーを教えてください。

朝夏 幅広いジャンルの曲が詰め込まれた『モダン・ミリー』の中で、私は「Jimmy」と「Gimme Gimme」をソロで歌います。

1幕で歌う「Jimmy」は、ロマンティックでヘッドボイス系の美しい旋律の曲。「Gimme Gimme」はストーリー性がある曲で、自問自答していきながら、最後に「私はこうするの」という気持ちを高らかに歌うんです。

ほかにも女の子たちと一緒に歌う楽しい曲や、タイピストのミリーが速記をしながらものすごい早口で歌う曲など、盛りだくさんですよ!(笑)

『モダン・ミリー』より「Jimmy」、「Gimme Gimme」

——お芝居ではコメディシーンもみどころですね。

朝夏 コメディについては、宝塚時代から「笑いの“間”をつかむのがうまいね」と、よく言われました。「お客さんがドッカンドッカン笑うってこういうことかー!」と身をもって体験していたので、今回もそんな感じになったらいいなと思っています。

「キャラクターがとてもカラフルです!」

——最後はハッピーエンドで、見終わったときに明るい気持ちになれそうです。

朝夏 笑いで元気になって、怒涛のようなダンスナンバーでテンションが上がる、そんな舞台です。あとこの作品は登場人物みんなが一生懸命なんです。見ていて「自分も頑張ろう」という気持ちになれるし、明日への活力をもらえるんじゃないかな。お客様の日常のモヤモヤした気持ちが晴れるような、明るいひとときを届けたいと思います!

宝塚で主人公ブラームスを演じた思い出

——次に、音楽とのかかわりや好きな楽曲を教えてください。音楽を好きになったのはいつ頃ですか?

朝夏 最初は幼稚園の頃でしたね。音楽教室に通ってピアノを弾いたり、タンバリンを叩いたりしていたんです。小学校ではブラスバンド部でトランペットを担当し、中学ではフルートを吹いていました。宝塚に入る前はバレエを習っていたので、クラシック音楽には親しみがありました。チャイコフスキーの《眠れる森の美女》など、心に残っています。

チャイコフスキー:バレエ《眠れる森の美女》

——普段はどんな曲を聴くのでしょうか?

朝夏 K―POP、特にBTSです!(笑) 曲とメンバーの人柄が両方好きなんですよ。母国語以外に日本語も英語も歌えるし、7人の声がかぶらない。そのうえ、ダンスもうまいってすごいなと思います。曲は「Mikrokosmos(ミクロコスモス)」や「Film out」、あと「Butter」が好きですね。

BTS「Butter」MV

——宝塚では宙組のトップスターとして、『エリザベート』のトートなど、数々の舞台で活躍されました。今も思い出に残る舞台や楽曲はありますか?

朝夏 印象に残っているのは、ブラームスを演じた『翼ある人びと』ですね。この舞台では、彼の交響曲第3番に日本語の歌詞をつけて歌っています。ちなみに私は歯医者さんの待合室やエレベーターの中で、ブラームスの交響曲第3番を聴くことが多くて。今もそんな不思議な偶然がたびたびあります(笑)。

ブラームス:交響曲第3番

——『翼ある人々』は、ブラームスとシューマン、クララの交流を描いた名作でした。音楽に純粋な情熱を抱き、どこか母性本能をくすぐる朝夏さんのブラームス像は、大変な評判になりましたね。

朝夏 あの舞台がなければ、おそらく私は今ここにいないし、トップスターにもならなかったと思います。実は、お稽古中はブラームスという役に不安を持っていて。宝塚の主役っぽくないし、主人公として大丈夫かなと感じてたんです。でも、いざ舞台に立ったら、劇場中のお客さんが感動して泣いていて……。素晴らしい作品なんだって気づきましたね。

あと、この作品はブラームスのほかにもシューマンやリスト、ワーグナーなどすごい作曲家たちの曲が流れますけど、私が一番好きだったのはショパン!(笑)彼のワルツ(第9番《告別》)なんです(笑)。

——それは意外でした(笑)。

朝夏 パーティのあとで落ち込んでいるブラームスに、クララが「踊りましょうか。世界を愛すれば、世界もその人を愛するわ」と慰めるシーンで流れる曲です。ブラームスの心が癒されていくのが自分の心情ともリンクして、大好きな曲になりました。

ショパン:ワルツ第9番《告別》Op. 69-1

——深い余韻を残す素敵な場面でしたね。ほかに宝塚時代の曲で、印象に残った曲はありますか?

朝夏 退団公演のダンスナンバーで使われた、ホルスト《惑星》の「木星」です。太田健さんが編曲した10分ぐらいの壮大なスケールの曲で、私のソロのダンスから始まり、最後は男役全員で黒燕尾で踊りました。フルオーケストラを録音するために、太田さんが東京に行ってくださったのを覚えています。

宙組公演『神々の土地』『クラシカル ビジュー』初日舞台映像

音楽は助けてくれる存在でもある

——退団されて5年、ミュージカルなどの世界で活躍中ですが、歌についてはどう思いますか?

朝夏 まだまだ勉強中ですね。ミュージカルで歌うときは技術だけでなく、感情をどうのせるかを考えています。ただ、感情過多にはならないように気を付けますね。歌は声帯という自分では見えないところを鍛えるので、人体の神秘だなと思います。使い方ひとつで声の出し方も変わるし、『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』と『モダン・ミリー』の歌い方も違う。本当に限界がないんです。

——朝夏さんにとって音楽とはどんな存在でしょうか?

朝夏 時には癒してくれて、時には元気をもらえる存在です。ミュージカルの仕事をするうえでは、いろんな面で助けてくれる存在でもあります。音楽のない世界は想像できません。

公演情報
ミュージカル『モダン・ミリー』

日時: 2022年9月7日(水)~9月26日(月)/10月1日(土)~10月2日(日)

会場: シアタークリエ(東京)/新歌舞伎座(大阪)

出演: 朝夏まなと、中河内雅貴、実咲凜音、廣瀬友祐、保坂知寿、一路真輝、ほか

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取材・文
NAOMI YUMIYAMA
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NAOMI YUMIYAMA ライター、コラムニスト

大学卒業後、フランス留学を経て、『ELLE JAPAN(エル・ジャパン)』編集部に入社。 映画をメインに、カルチャー記事担当デスクとして勤務した後、2020年フリーに...

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