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2020.08.22
おやすみベートーヴェン 第251夜【作曲家デビュー・傑作の森】

「舞台劇(悲劇)《エグモント》」——付曲が難しいと言われていたゲーテ作品のための音楽

生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。

1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!

ONTOMO編集部
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

監修:平野昭
イラスト:本間ちひろ
編集協力:水上純奈

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付曲が難しいと言われていたゲーテ作品のための音楽「舞台劇(悲劇)《エグモント》」

このころベートーヴェンが請け負っていたのはゲーテの悲劇『エグモント』のための劇付随音楽であった。宮廷劇場支配人のヨーゼフ・ハルトル・フォン・ルクセンシュタイン(1760?/61?〜1822)は、戦争のため休演していた劇場運営を立て直すため、劇場救済興行として1810年の春にゲーテの『エグモント』とシラーの『ヴィルヘルム・テル』による舞台興行を企画し、それらに付随音楽をつけることで聴衆動員をもくろんだ。ハルトルはふたりの作曲家に白羽の矢を立てた。アーダルベルト・ギュロヴェツ(1763〜1850)とベートーヴェンであった。ベートーヴェンはシラー作品への付曲を願ったのだが、付曲が難しいと言われていたゲーテ作品を担当することになった。だが、スペインの圧政に苦しむオランダ独立運動に取材した劇で、非業の死をとげる実在人物エグモントの悲劇に共感し、作曲意欲が高まっていたようで、秋にはスケッチを開始していた。

6月6日付でブライトコップフ・ウント・ヘルテル社に宛てた手紙(BB446)で「ゲーテ作の悲劇『エグモント』の音楽、序曲など10曲を1400グルデンで提供できます……この音楽は数日中に舞台上演されることになるでしょう」と述べているところからすると、最初は音楽なしで上演されていたのである。6月15日の第4回上演になってブルク劇場の舞台に初めてベートーヴェンの劇音楽が鳴り響いたのである。

——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)112、113ページより

ベートーヴェンが付曲が難しいと言われていたゲーテ作品を担当したのは、彼への期待があったからなのでしょうか。

シリアスかつ威厳をもったこの作品のサウンドは、『エグモント』の上演に華を添えたことでしょう。初めて音楽付きで上演されたときの様子を見てみたいですね。

作品紹介

「舞台劇(悲劇)《エグモント》」Op.84

作曲年代:1809年10月〜10年6月(ベートーヴェン38歳〜39歳)

初演:1810年6月15日

出版:1810年(序曲のみ)、1812年(序曲以外の劇中曲)

ゲーテ原作の舞台劇

序曲以外に9曲の付随音楽

平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)
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