
チューリヒ歌劇場が新体制での初シーズン終了 ベルナイムを迎えノセダ指揮で野外公演

海外のクラシック界のニュースやコンサート、オペラ公演の様子を、現地在住の筆者がいちはやくお届け。今回は6、7月のスイスの音楽シーンから、チューリヒのレポートをお届けします。

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1941年12月創刊。音楽之友社の看板雑誌「音楽の友」を毎月刊行しています。“音楽の深層を知り、音楽家の本音を聞く”がモットー。今月号のコンテンツはこちらバックナンバ...
マティアス・シュルツ新総裁が就任して10カ月、ほんとうに目が回るような興味深い公演が途切れることなく続いたチューリヒ歌劇場の初シーズンが終わった。もともと月に1回は新演出を発表する劇場であったが、そこに新フェスティヴァルが加わり、シーズンオープニングには24時間劇場を開放して、舞台上で泊まるという体験もできた。
締めくくりは3日間連続の「Opernhaus für Alle」で、1日目はバレエ公演、2日目はオペラ公演を劇場前広場の大スクリーンに映し出し、無料で観られるイヴェントに加え、今年は3日目に初めてライヴ・コンサートも催された。
6月26日は36℃の猛暑のため1時間遅らせ、今季から当劇場のプリンシパルダンサーとしてドレスデン州立歌劇場から引き抜かれた綱木彩葉がヒロインを踊る《ロメオとジュリエット》が大きく映し出された。
27日は先月レポートしたワーグナー《タンホイザー》、そして28日はジャナンドレア・ノセダ音楽監督が指揮する歌劇場管弦楽団がバンジャマン・ベルナイムを迎え、この広場完成時の2014年以来12年ぶりのオープンエアコンサートとなった。ビゼー「《カルメン》前奏曲」で始まり、ベルナイムは〈花の歌〉で、来年のドン・ホセ初役の準備を着々と進めていることをうかがわせた。次はグノーに移り、《ファウスト》のバレエ音楽のあと、《ロメオとジュリエット》からアリア〈昇れ、太陽よ〉を抒情的に歌った。最後はマスネで、《タイスの瞑想曲》をコンサートマスターのバルトゥオメイ・ニジョウのソロもふくめて甘く聴かせたあと、マスネ《ウェルテル》の〈オシアンの歌〉でドラマティックに前半を終えた。後半はドヴォルジャーク「交響曲第9番《新世界より》」で華々しく幕を閉じた。
テテルマンの主演でアルミリアートが指揮したチューリヒ歌劇場の《ウェルテル》
上述のベルナイムが当劇場の前シーズンで好演したマスネ《ウェルテル》。2018年のプレミエ時にピョートル・ベチャワが歌い、そしてフアン・ディエゴ・フローレス、ベルナイムと、どんどんフランス・オペラらしく研ぎ澄まされてきたが、今年は今話題を集めているテノール、ジョナサン・テテルマンの主演でマルコ・アルミリアートが指揮し、プッチーニのようなドラマティックなアプローチで魅せた。フレーズの歌わせかたもロマンティックで、テテルマンの取り憑かれたような激情によく合う。「フランス・オペラらしくない」と一刀両断されればそれまでだが、心を鷲掴みにされることは否めない。シャルロッテ役のアンナ・ゴリャチョーワは、そんな骨太な主人公と比べても太すぎる声で、どうしてもこの役になじめない。アルベール役のアクセル・ダヴェヤンとソフィ役のチェルシー・ツルフリューは好演した(所見日:7月1日)。

そして7月3日に初見したモーツァルト《コジ・ファン・トゥッテ》も、同じく2018年にキリル・セレブレンニコフが演出したプロダクションだ。映画監督でもある視点から、まず舞台上に2階建ての建物を作り、男性陣と女性陣の会話をうまく分けたり、恋人を取り替えるときに黙役に演技させ、歌手は黒子のように側で歌う方法をとった。視覚的にはひじょうに楽しめる舞台となっているが、音楽的にはドタバタしてしまうところも多かった。また、最後の種明かしの際、元の恋人に殺し文句を歌うのが不可解だった。
ヴィンタートゥール・ムジークコレギウムと、来季で首席指揮者契約が終わるロベルト・ゴンザレス=モンハスは若々しいモーツァルトを聴かせたが、オペラに慣れていないため、牽引力が足らない。
今宵のいちばんの歓びは、フェッランドを歌うボグダン・ヴォルコフを聴けたことだ。初めて聴いたときから注目していたが、重い役を歌ったせいで光らないこともあったため、これからもレパートリーに気をつけてもらいたい。ドン・アルフォンゾ役のルカ・ピサローニも重めの役だとくすぶるので、このような役で輝き続けてほしい。フィオルディリージ役のエルベニータ・カイタツィは低音も安定し、余裕の歌唱と演技を見せ、初役とは思えなかった。ドラベッラ役のシエナ・リヒト=ミラーも初役で健闘したが、2022年から当歌劇場のアンサンブル歌手として活躍しているものの、歌唱力が今一つ伸びない。反対にグリエルモ役のヤニック・デブスは2024年からアンサンブルに入ったが、このところ伸びてきている。レベカ・オルヴェーラは、なんとか頑張ってデスピーナを演じた。





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