2020.09.24
おやすみベートーヴェン 第284夜【不滅の恋人との別れ】
《吟遊詩人の亡霊》——岩山の上から聴こえる歌が心を引き裂く.....低声歌手のため歌曲
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
ウィーン会議、ナポレオンの没落......激動のウィーンで43歳になったベートーヴェン。「不滅の恋人」との別れを経て、スランプ期と言われる時期を迎えますが、実態はどうだったのでしょう。
岩山の上から聴こえる歌が心を引き裂く.....低声歌手のため歌曲《吟遊詩人の亡霊》
ハインツ・ルドルフ・ヘルマンの詩によるもので、《ナイチンゲールの歌》から半年後の1813年の11月に作曲。歌唱声部が低音部譜表(ヘ音記号)で書かれており、バスあるいはバリトン歌手が想定されている。
「あそこの高い岩山の上で、年老いた吟遊詩人の亡霊が歌っていた。その声はエオリアンハープの響きのように、不安げな重く苦しい悲しみの歌だ。それが私の心を引き裂く」
メーシッヒ・ラングザーム(ほどよくゆっくりと)、♯レからシまでの6度という狭い音域で、ほとんど音階風の旋律で歌われる。
全18小節だが、5行詩の全8節を反復するのは13小節。第1節の前に2小節、低音域からハープが立ち上がるような分散和音を響かせる前奏があり、第8節を歌い切ったあとには4小節の静かな後奏がある。
解説:平野昭
ベートーヴェンが生涯にこの1作しか作曲していない人物ヘルマン(1787-1823 作家/批評家)の詩による歌曲です。バス・バリトン歌手の重々しい語り口と、寂しげなピアノ伴奏が印象的な作品です。
作品紹介
《吟遊詩人の亡霊歌》WoO142
作曲年代:1813年11月(ベートーヴェン42歳)
出版:1813年末
おやすみベートーヴェン
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