
合唱の魅力、再発見!~合唱コンクールや卒業式で歌われる曲、マニアの世界、感動体験を語る

小中学校で誰もが経験したことのある合唱。少し気恥ずかしかったり、熱くなったり、メロディや歌詞に感動したり、いろいろな思い出が詰まっているのでは。その魅力について、音楽之友社で合唱楽譜や音楽教育に携わる二人に語ってもらいました! 大人になっても気軽に楽しめる合唱、ぜひトライしてみては?

東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
今回は、「教育音楽」編集長の星野さんと、楽譜課で合唱楽譜を担当する服部さんを迎え、「合唱の魅力、再発見!」をテーマに合唱愛を語り合いました。
※本記事はポッドキャスト番組『ONTOMO Radio』で語られた内容を再構成しています。
中学で出会ってから20年超、合唱を続けて
——まずは、お二人の合唱歴について教えてください。
星野 私が初めて合唱を意識したのは……という言い方も変ですが、中学校のときです。クラス合唱がきっかけでした。女子の声と男子の声が重なり合う、あの混声合唱ならではの響きに触れて、思春期だったこともあってか、とても面白く感じたんです。
その頃、学校には有志による課外合唱(昼休み合唱団)もあったのですが、私は小さい頃からピアノを習っていたので、先生から「弾いてみない?」と誘われて。そこで、クラス合唱とはまた違う合唱作品の深みに触れて、そこからずるずるとはまっていった感じです。
それで、卒業後に昼休み合唱団のOB・OG合唱団が結成され、20年以上経った今も続いています。私は基本的に歌う側ではなく、伴奏者として関わっています。
服部 私はもともとテニス少年でした(笑)。中学では部活に入らず、外で硬式テニスを続けていました。
転機になったのは中学2年生のときです。音楽の先生が「来年は混声合唱をやりたい」と言い出して、音楽の授業で元気よく歌っていた男子が“助っ人男子”として呼ばれたんです。私もその一人でした。
その活動でコンクールに出場し、結果も出たことで完全に合唱に魅了されました。その後は高校、大学と続け、現在も合唱団の指導や演奏活動をしています。わりと四六時中合唱のことを考えています(笑)。

合唱コンクールの人気曲は意外と普遍的
——学校の合唱コンクールや卒業式で歌われる曲にも流行がありますよね。
星野 毎年「教育音楽」で人気曲のアンケートをとっていますが、実は定番曲はあまり変わらないんです。たとえば「マイ バラード」「COSMOS」「時の旅人」「大地讃頌」などは何十年も歌われ続けています。
「マイ バラード」
「COSMOS」
——何十年前かは言えませんが(笑)、私の頃に歌っていた曲もありますね。
星野 子どもたちにとっては毎年初めて出会う曲ですから、長く歌われているということは、それだけ魅力があるということなんでしょうね。
定番と呼ばれるような曲はそうそう出てきませんが、最近で言うと…といっても10年以上前の曲ですが、東日本大震災をきっかけに生まれた「群青」は卒業式の新定番になりましたね。あとは、RADWIMPSの「正解」も定番になりつつあります。
合唱コンクールは新曲誕生の場にも
——クラス合唱と合唱部では、選ぶ曲も違うのでしょうか。
服部 かなり違いますね。クラス合唱では「一生懸命生きよう」「仲間と進もう」といった、ストレートに気持ちが伝わる作品が好まれます。
一方で合唱部が取り組む作品は、谷川俊太郎さんや工藤直子さんなどの現代詩を題材にしたものも多く、より文学的な世界になります。
また、コンクールでは新曲委嘱も盛んです。他校と同じ曲を避けて、自分たちだけの表現を追求する文化があります。
星野 合唱を通して詩人の言葉に触れられるので、媒介という意味でも、合唱には意味があると思います。
——委嘱だと歌詞はどうなりますか?
服部 詩集などから引用する場合もありますし、場合によっては歌詞も込みで委嘱することもあります。
——コンクールからかなり多くの作品が輩出されているんですね。
服部 コンクールの結果をみると皆さん刺激されるので、前年の傾向から選曲したり、逆に個性を出そうとしたり、影響は大きいですね。

思春期だからこそ合唱に意味がある
——中学生の頃は、歌うこと自体が少し恥ずかしい時期でもありますよね。
星野 そうなんです。歌は内面に直結していて、自分の心をさらけ出すような行為でもあるので、私も当時は歌うのがすごく恥ずかしかった。でも、だからこそ尊いのだとも思います。
そして、当たり前のことながら、合唱は一人では成立しない。クラスに歌の上手な子が一人いても、その子の歌声だけでは合唱にならない。みんなの声が重なって、調和して初めて一つの音楽になるわけですが、だからこそ、合唱コンクールを通してクラスが一つになる……全員の協力と調和が不可欠な合唱を通してクラスが「個の集まり」から「一つのチーム」へとまとまっていく、その経験に大きな意味があるのだと思います。
——表情の指導も入りますよね。私はいまだに恥ずかしいのですが(笑)。
星野 あまり言いすぎるのも良くないですよね(笑)。顔の筋肉が歌に影響するというのは確かですが、「こういう声を出すために」と理屈を納得したうえで実践していけたらいいですよね。
大人になってからでも合唱は始められる
——大人になってから合唱を始めたい人も多いと思います。実は音楽之友社でも、有志による「音楽之友社合唱団」が活動していますよね。私は昨年初めて参加したのですが、昼休みの短い練習時間でも、みんなで声を合わせる楽しさを改めて感じました。
楽器を演奏するのとはまた違って、自分自身が楽器になって歌う感覚がありますし、歌詞の世界に触れられるのも魅力でした。
星野 音楽之友社合唱団は、Nコンの「MV(ミュージックビデオ)部門」への参加をきっかけに始まりました。
服部 最初は「歌っちゃおうか」と飲み会のノリで決まったんです(笑)。
星野 部署も年齢もさまざまな従業員が集まっていて、普段はあまり接点のない人とも一緒に音楽をつくれるのがおもしろいですね。
服部 合唱は楽器を持っていなくても始められますし、一人ひとりの経験や技術の差を越えて一緒に楽しめるのが魅力です。音楽之友社合唱団でも、合唱経験者だけでなく、久しぶりに歌う人も参加しています。
歌は、自分の思想や生活、人生と直接的な関わりがあります。今の自分の人生が表れるというか。子どもの頃に歌ったことがある詩でも、今だからこそ感じることがあると思います。


——参加してみて、学生時代以来ほとんど歌っていなかった人でも楽しめるんだなと感じました。
服部 そうなんです。だからこそ、大人になってから始める人も少なくありません。まずは地域の市民合唱団を探してみるのがおすすめです。
団体によってカラーは本当にさまざまです。コンクールを目指す団体もあれば、歌うことそのものを楽しむ団体もあります。ホームページを見て雰囲気を調べるのもいいですが、最終的には一度見学してみるのが一番ですね。
音楽之友社合唱団による「旅立ちの日に」
合唱だからこそ生まれる感動
——お二人の合唱にまつわる「感動体験」を教えてください。私は小学校の合唱団で歌った曲って今でも覚えていて、ふと思い出して歌いたくなることもあります。
服部 自分が歌っていて感動することよりも、人の演奏を聴いて胸を打たれることが多いです。子どものコーラスには、その年代ならではのピュアな歌声がありますし、シルバーコーラスには人生を重ねてきたからこその円熟味があります。仕事を引退されて、「歌に人生を懸けているんだな」と感じるような演奏に出会うと、気づけば涙が出ていることもあります。
星野 歌って感動した体験ではないのですが、合唱表現ならではの感動を鮮烈に味わった体験が一つあって、中学生の頃に出会った木下牧子さんの「春に」を演奏したときのことです。
曲の終盤で、「地平線のかなたへと」と男声が歌う場面で、男声が歌い終わらないうちに「歩きつづけたい」と女声が重なってくるのですが、詩がもつ、なんとも言えない“はやる”気持ちがその重なり合いで見事に表現されていて、中学生の私は「合唱ってすごい!」「木下牧子さんすごい!」と舞い上がりました。木下牧子さんは初めて名前を覚えた作曲家かもしれません(笑)。
「春に」
星野 あと、思い出深いのは卒業式で歌った「旅立ちの日に」です。「いま、別れのとき」と歌うサビを、練習で歌っているときはなんでもないのですが、いざ本番で、もうこの歌を歌い終わったら中学校を去らなければならないというまさにそのとき……「いま、別れのとき」と歌った瞬間、一気に感情が込み上げてきて涙が溢れました。あとにも先にもこんな体験はないです。
そう思うと、合唱は人生のさまざまな記憶や場面と結びついているような気がします。年齢を重ねるごとに味わいが深まり、その時々で新しい感動に出会える……それこそが、一生涯を通じて味わう合唱の本当の魅力なのかもしれません。
本記事の内容はポッドキャストでもご視聴いただけます!
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